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養育費を元配偶者が払わないときの対処法
離婚して未成年の子どもを引き取った後、元配偶者が養育費を払わないケースは多々あります。厚生労働省の令和3年度の調査では、養育費を受け取ったことがない母子世帯が56.9%もいるとのことです。
今回は、元配偶者に養育費を払ってもらうための対処法をご紹介します。
離婚して子どもの親権者ではなくなった親であっても、法律上の親子関係は切れません。そのため、離婚後は親権者に対して養育費を支払う義務を負います。
したがって、離婚時に養育費の取り決めをしていない場合でも新たに養育費を請求することが可能です。
2.養育費を払わない元配偶者に問える責任
養育費を払ってもらえない側としては、元配偶者に対して重い責任を問いたいところでしょう。養育費を払わない元配偶者に問える法律上の責任は、以下のとおりです。
(1)罰則はない
養育費の不払いは民法に違反する行為ではありますが、罰則はありません。そのため、元配偶者が意図的に養育費を不払いにしたとしても、罪に問うことはできません。
(2)遅延損害金を請求できる
養育費の取り決めをしている場合は、不払いとなっている金額に加えて遅延損害金も請求できます。遅延損害金とは、支払いが遅れたことに対する損害賠償金のことです。金額は「利率×滞納した日数」で決まります。
利率の取り決めがない場合には法定利率である年3%(2020年3月31日以前に養育費の取り決めをした場合は年5%)が適用されます。
(3)財産の差し押さえができる
次のいずれかの形式で養育費が取り決められている場合は、元配偶者の給料や預貯金
などの財産を差し押さえて強制的に養育費を回収することが可能です。
・公正証書(強制執行認諾文言が付されているもの)
・家庭裁判所の調停、審判、または裁判
離婚協議書で養育費を取り決めていても、公正証書にしていなければ差し押さえはできないことにご注意ください。
3.配偶者が養育費を払わないときの具体的な対処法
元配偶者が養育費を払わないときは、次の流れで支払いを請求していきます。
(1)養育費の取り決めがない場合
まずは、養育費を取り決めることが必要です。元配偶者に連絡し、話し合いをしてみましょう。話し合いがまとまったら、公正証書で合意書を作成することをおすすめします。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てます。調停でも合意ができない場合は審判の手続きに移行し、裁判所が適正な金額を決めてくれます。
(2)養育費の取り決めがある場合
養育費の取り決めがある場合も、まずは元配偶者に連絡して任意の支払いを促すことが望ましいです。任意の支払いが期待できない場合には、内容証明郵便を送付して請求するのが一般的です。
それでも元配偶者が払わない場合、公正証書または家庭裁判所の調停、審判、裁判で養育費の支払いが決められていれば、強制執行を申し立てて財産を差し押さえましょう。
夫婦間で取り交わした離婚協議書しかなく、任意に払ってもらえない場合には、養育費請求調停・審判で改めて養育費の取り決めをすることになります。
4.過去の養育費も遡って請求できる?
養育費の取り決めがある場合は、既に不払いとなっている分も遡って請求できます。
しかし、取り決めがない場合は今後の養育費の請求しかできないと考えられています。ただし、話し合いで合意ができれば、過去の分を遡って払ってもらうことも可能です。
養育費を請求する際には、「取り決めの合意ができるか」と「取り決めたとおりに払ってもらえるか」という2段階の問題があります。
円満な話し合いによって養育費を払ってもらうことが理想的ですが、強制的に回収するための法的措置が必要なケースも少なくないのが実情です。
当事者間で円満に話し合えない場合でも、弁護士にご依頼いただければ冷静な交渉ができますし、法的措置もお任せいただけます。
養育費の請求をお考えの方は、是非一度、下関、宇部、周南、岩国の弁護士法人ONEへご相談ください。