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離婚届を勝手に提出してはいけない理由
協議離婚をする場合、離婚届を提出するまで離婚は成立しません。ただ、夫婦間で意見が対立し、離婚協議が進まないこともあるでしょう。そんなときでも、離婚届を勝手に提出してはいけません。その理由は、次の4点です。
・離婚が無効になるから
・相手方に通知されるから
・再婚が取り消されることがあるから
・罪に問われるから
協議離婚は夫婦の合意によって離婚することですが、判例上、ここにいう「合意」とは、「離婚届をすることについての合意」をいうとされています。
形式的に離婚届を提出しても、相手方の承諾を得ていなければ離婚の合意が得られていないことになるため、役所が受理したとしても離婚は無効です。
なお、離婚調停や審判、訴訟をした場合には、家庭裁判所で離婚が決まった時点で離婚が成立します。そのため、勝手に離婚届を提出しても有効となります。実際、離婚調停や審判、訴訟で離婚が決まった後は、夫婦のどちらか一方が単独で離婚届を提出するケースがほとんどです。
2.離婚届を勝手に提出すると相手方に通知される
離婚届を勝手に提出した場合でも、形式的な要件を満たしていれば役所で受理されます。
しかし、本人確認ができない当事者がいる場合には、役所はその当事者に対して、離婚届を受理した旨を通知することが戸籍法で義務付けられています。したがって、離婚届を勝手に提出すると、役所から相手方(配偶者)に対して通知が行われるのです。
通知を受け取った相手方は、離婚の無効を主張して調停や裁判をしてくることでしょう。勝手に離婚届を提出されたことを理由として、慰謝料を請求してくる可能性もあります。
つまり、離婚届を勝手に提出したところで、スムーズには離婚できないことに注意しなければなりません。
3.再婚しても婚姻を取り消されることがある
役所で離婚届が受理されると、勝手に提出した場合であっても戸籍上は離婚したものとして取り扱われます。
しかし、法律上は離婚が無効であるため、その後に再婚すると「重婚」となることにご注意ください。重婚が生じた場合は民法の規定に基づき、後の婚姻が取り消されます。
前婚の配偶者が離婚の無効を主張する場合には、後の婚姻の取消しも請求してくるため、再婚したとしても安心して暮らすことはできないでしょう。
4.離婚届の無断提出で成立する犯罪
相手方に無断で離婚届を作成すると他人の名義を冒用したことになるため、その時点で有印私文書偽造罪が成立します。
偽造した離婚届を役所に提出すると偽造私文書行使罪が成立し、受理されると公正証書原本不実記載罪も成立します。
離婚届の無断提出はれっきとした犯罪であり、3ヶ月以上5年以下の懲役という刑罰を科せられることもあるので、絶対に行ってはいけません。
5.離婚届を勝手に提出されそうなときの対処法
相手方が離婚届を勝手に提出するおそれがある場合には、「離婚届不受理申出書」を役所に提出しておきましょう。こうしておけば、申出を取り下げるまで離婚届は受理されなくなります。
離婚届不受理申出を行わずに離婚届が受理されてしまうと、離婚の無効を争うために調停や裁判をしなければなりません。手間や費用の負担が大きくなってしまうので、事前に離婚届不受理申出を行っておくことが大切です。
協議離婚をするなら夫婦が十分に話し合い、双方が納得して離婚届を提出することが重要です。弁護士法人ONEにご相談いただければ、弁護士が代理人として相手方との交渉を進めて、離婚手続きをサポートいたします。
離婚協議がスムーズに進まない場合には、下関、宇部、周南、岩国の弁護士法人ONEへお気軽にご相談ください。