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父親が親権を獲得するのは難しい?
離婚するときに未成年の子どもがいる場合は、夫婦のどちらか一方を親権者に指定しなければなりません。
双方が親権を譲らずに対立するケースは非常に多いですが、父親は親権者争いでは圧倒的に不利になってしまうのが実情です。
しかし、父親が親権者になれる可能性もゼロではありません。
1.一般的には母親が親権を獲得するケースが圧倒的に多い
厚生労働省の人口動態調査によると、離婚して父親が親権者となっているケースは例年10%強、裁判所の司法統計によると、離婚調停や審判で父親が親権者と指定されているケースは例年10%未満となっています。
離婚件数全体の中で父親が親権を獲得できている割合は、約1割に過ぎないのが現状です。
2.親権者争いで母親が有利となる理由
一般的に、子どもの身の回りの世話をする能力は、父親よりも母親の方が長けているといえます。特に乳幼児を育てるためには、母親から離さない方がよいと考えられています。このことを「母性優先の原則」といいます。
さらに、親権者を決める際には「継続性の原則」というものも重視されます。これは、離婚後もそれまでの養育環境をできる限り変更しない方がよいとされる考え方のことです。
多くの家庭では、父親が主に外で働き、家庭では主に母親が子育てをしているものです。このような場合は、基本的に離婚後も母親が子育てを継続した方がよいと判断されてしまいます。
なお、子どもの意思も尊重されますが、15歳未満の子どもの意思は参考にされるのみであり、決め手とはなりません。
3.父親が親権者争いで有利となるケース
以下のようなケースでは母親が子育てをすることが望ましいとはいえないため、父親が有利となる可能性が高くなります。
・母親が子どもを虐待している
・母親が育児放棄をしている
・母親が重度の病気や薬物依存などで子育てに耐えられない
・母親が子どもを置いて家から出ていった
注意が必要なのは、母親が「不倫をした」「浪費癖がある」「借金をしている」「アル中である」などの場合でも、それだけで父親が親権者争いで有利になるわけではないということです。
親権者の指定は、あくまでも父母のどちらが子育てをした方が子どもの成長にとって望ましいかという観点から行われるものです。
たとえ母親が離婚原因を作ったとしても、原則としてそれとは無関係に親権者の指定が行われます。
具体的には、一例ですが以下のような事情があってはじめて父親が有利となります。
・母親が不倫相手との交際にかまけて育児放棄をしている
・浪費癖があるために子どもに十分な教育ができていない
・借金があるために子どもに十分な食事を与えていない
・アル中のために子どもの身の回りの世話ができていない
4.父親が親権を獲得するためのポイント
母性優先の原則に対して父親は太刀打ちできませんが、他の側面では父親が有利な事情を備えることも可能です。
まずは継続性の原則との関係で、離婚前から子どもと一緒に過ごす時間を可能な限り多く確保して、子育てを分担することが最も重要です。
別居するとしても、子どもと一緒に別居しましょう。それが難しい場合は、できる限り別居しない方がよいでしょう。
離婚後に男手ひとつになると、どうしても養育に手が回らないときもありますので、子育てに協力してくれる人を確保することも大切です。
そして、子どもの年齢が低ければ低いほど母性優先の原則が強く働きますので、どうしても親権を獲得したいのなら、少なくとも子どもが小学校に入るまでは離婚を待つ方が望ましいといえます。
父親が親権を獲得することは容易ではありませんが、可能性を高めるためにできることはいくつもあります。弁護士にご相談の上、正しく対処していくことをおすすめします。
離婚に際して親権問題でお悩みの方は、下関・宇部・周南・岩国の弁護士法人ONEまでぜひ一度、ご相談ください。