コラム一覧
意識不明の配偶者と離婚する方法
配偶者が事故や病気などで意識不明となり回復の見込みがない状態となれば、離婚したいと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
配偶者が意識不明のままでも、所定の手続きを踏めば離婚できる可能性があります。
財産分与は、婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産を分け合うものです。夫婦共有財産の形成・維持に貢献した度合いに応じて分け合うことで、公平な財産分与が可能となります。
そして、夫婦の貢献度は基本的に同等と考えられています。妻が専業主婦だとしても、家事や育児をして家庭を支えているからこそ夫は外で働き、収入を得ることができるからです。
したがって、財産分与の割合は原則として2分の1ずつとされています。
夫婦で話し合って合意すれば自由に割合を決めることができますが、話し合う際には2分の1ルールを念頭に置いておいた方がよいでしょう。
2.勝手に離婚届を提出したらどうなる?
配偶者が意識不明だからといって、勝手に離婚届を提出してはいけません。
相手方の同意なく提出した離婚届でも役所では受理されますが、法律上、その協議離婚は無効です。
配偶者の療養・介護を担当している医療や社会福祉の関係者が問題視すれば、所定の手続きを経て離婚無効訴訟を提起される可能性があります。
公文書を偽造したことで罪に問われるおそれがあることにも注意しなければなりません。
何よりも、勝手に離婚届を提出して意識不明の配偶者と縁を切ることは倫理に反する行為なので、やめておきましょう。
3.意識不明の配偶者と離婚する方法
意識不明の配偶者と離婚するためには、以下の手続きを踏む必要があります。
(1)成年後見人を選任する
意識不明の配偶者は単独で離婚という法律行為はできないため、まずは家庭裁判所で成年後見人を選任してもらう必要があります。
成年後見人が本人を代理して離婚問題に対応することになるのです。
すでにあなたが成年後見人となっている場合には、成年後見監督人を選任してもらう必要があります。
(2)離婚訴訟を提起する
成年後見人あるいは成年後見監督人が選任されたら、その人を相手として離婚訴訟を提起します。
配偶者が意識不明となる前に不倫やDVなどの有責行為を行っていたのであれば、それを理由として離婚が認められるでしょう。
そのような事情がなかったとしても、状況によっては「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚が認められる可能性があります。
その状況とは、裁判例上、相手方の今後の療養や生活についてできる限りの方途を講じ、ある程度の見込みがついていることが必要とされています。
ですので、「意識不明の配偶者から解放されたい」という理由だけでは必ずしも離婚が認められるとは限らないことに注意が必要です。
4.意識不明の配偶者との離婚で養育費はもらえる?
未成年の子どもがいる場合、配偶者が意識不明になったとしても法律上の養育義務がなくなるわけではありません。
そのため、離婚が認められて、あなたが親権者となった場合は養育費の請求が可能です。
ただし、配偶者の支払い能力は考慮する必要があります。今後の療養費や生活費に事欠くようであれば、養育費をもらうことは難しいかもしれません。
しかし、年金を受給していたり、交通事故による賠償金や傷病による保険金などを受け取っている場合には、適正な養育をもらえる可能性が十分にあります。
4.意識不明の配偶者と離婚するのは悪いこと?
意識不明の配偶者との離婚が可能であるとしても、罪悪感から離婚に踏み切れない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、法律では、回復の見込みがない精神病にかかった配偶者と離婚することが権利として認められています。
今後数十年にわたって配偶者の介護をしていくのもひとつの人生ですが、誠意を尽くした上で離婚し、新たな生活を始めるのもひとつの人生です。どちらが良い・悪いということはありません。
迷ったときは、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。離婚できるかどうかだけでなく、離婚してよいのかどうかについても有益なアドバイスが得られます。
下関、宇部、周南、岩国、その他山口県内で離婚をお考えの方はぜひ一度、弁護士法人ONEまでお気軽にご相談ください。