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【最高裁】離婚成立後に過去の婚姻費用は請求できるか

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1.はじめに

最近,最高裁判所が「婚姻費用調停申立後に離婚した場合であっても,未払の婚姻費用を請求することができるか」について判断を示しました(最決令和2年1月23日)。今日はこの判断の内容についてみていきたいと思います。

2.事実関係

本件は,妻が夫に対し婚姻費用分担の調停を申し立てた2か月後,かねてから行われていた同一当事者間の離婚調停が成立し(財産分与や清算条項は定められず),他方,婚姻費用分担の調停は合意ができずに審判に移行したというものです。

3.婚姻費用の定義,本件の論点

婚姻費用とは,結婚している夫婦が生活保持義務(双方で同等の生活レベルを保持する義務)に基づいて互いに負担すべき費用であり,民法上この婚姻費用の分担を請求できるとされています。

そうした性質があることから,未払の婚姻費用を支払うように調停を申し立てた後,支払がされないうちにその当事者が離婚した場合,もはや婚姻が継続していない以上過去の未払い婚姻費用を支払わせることはできないのではないか,という問題がありました。実際,原審である札幌高等裁判所はそのような理由から,婚姻費用の請求を却下しました。

4.最高裁判所の判断

これに対して最高裁判所は,婚姻費用の審判申立ての後に当事者が離婚したとしても,婚姻費用の請求をすることができるという判断を示し,さらに審理を尽くさせるため札幌高等裁判所に差し戻しました。

理由として,婚姻費用分担は婚姻を前提としたものではあるものの,婚姻中に発生した未払婚姻費用についてその後の離婚を理由に実体法上の権利が消滅するとする理由がないこと,家庭裁判所も過去にさかのぼって婚姻費用分担額を決定できること,そのことは仮に未払婚姻費用を財産分与で清算できる場合であっても変わらないこと,などが挙げられています。

5.まとめ

実際に離婚するためには相手と話し合う必要がありますが、直接話し合うことは身に危険が及ぶおそれがあるので、避けましょう。

安全かつ冷静に話し合いを進めるためには、第三者に間に入ってもらうことが大切です。

専門的な知識と交渉力を持った弁護士を介して話し合うことが最も効果的です。

6.離婚調停・訴訟

本件決定によって,離婚後も過去の婚姻費用分担を請求することができることが明らかとなりました。もちろん,このことは未払婚姻費用を別途財産分与において考慮することを否定するものではありません。

いずれにしてもこれらは婚姻費用が決まらない,もしくは支払われないうちに離婚した場合に問題となるケースです。実際のところは,別居後できるだけ早期に婚姻費用分担を請求するべきでしょう。

書面で証拠を残すなり,早めに調停を申し立てるなりした方がよいということです。

別居と離婚を考えているが生活費が心配である,相手方に婚姻費用を請求したいがいくらになるのか,相手方が婚姻費用を支払ってくれない,などでお悩みの方は,お気軽に下関・宇部・周南・岩国の弁護士法人ONEへご相談ください。

 

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