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経営者目線に沿った合意退職のすすめ

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会社に辞めてほしい従業員がいる場合、解雇するよりも合意退職の形をとる方が望ましいといえます。

ただ、合意退職の手続きを進める際には、法的に注意すべきポイントがいくつかあります。

1.合意退職とは

合意退職とは、会社と従業員との合意によって雇用契約を解除することです。

従業員側から退職を申し出て会社が受理することもあれば、会社側から退職を打診して従業員が承諾することもあります。

どちらの場合も、双方が納得した上で合意する限り、円満な退職が可能となります。

2.従業員に退職してもらう他の方法

合意によらない退職方法としては、従業員が一方的に退職する「自主退職」と、会社側が一方的に従業員を退職させる「解雇」とがあります。

期間の定めのない雇用契約において、従業員はいつでも退職を申し入れることができ、申し入れの日から2週間が経過すると雇用契約が終了します。

他方、会社側も従業員を解雇することが可能な場合がありますが、自由に解雇できるわけではありません。

解雇には、普通解雇・懲戒解雇・整理解雇の3種類があり、具体的な要件はそれぞれ異なりますが、いずれも非常に厳しい要件を満たす必要があります。

要件を満たさない場合は不当解雇となり、解雇が無効となることに注意が必要です。

このリスクを回避するために用いられる手法が「退職勧奨」というものです。

退職勧奨とは、会社から従業員に対して退職を促すことをいいます。従業員が退職に応じる場合、自主退職と合意退職のどちらの形をとることも可能です。

3.合意退職のメリット

合意退職のメリットは、不当解雇で訴えられるメリットを回避して、円満に退職してもらえることです。
交渉の上で合意が得られれば、辞めてほしい従業員に辞めてもらうことができます。
解雇ではないので、解雇予告手当は不要です。

4.合意退職のデメリット

合意退職のデメリットは、必ずしも合意が得られるとは限らないことです。合意を得るための交渉において、退職金の増額などの金銭的負担を要することもあります。
合意退職の形をとってはいても、従業員が納得していなければ、不当解雇で訴えられる可能性があることに注意が必要です。

5.合意退職は自己都合?会社都合?

従業員を合意退職させる場合、自己都合と会社都合のどちらの形をとっても差し支えありません。
通常、会社としてはどちらでも手続きはさほど変わらないので、従業員の希望に従った方がよいでしょう。

一般的には、会社都合の方が早く失業保険給付を受け取れるため、会社都合退職を希望する従業員が多いものです。

ただし、自己都合と会社都合とで退職金の額に差がある会社などでは、慎重な交渉が必要なこともあります。

6.合意退職手続きの進め方

会社側から辞めてほしい従業員に働きかける際には、退職勧奨を行うのが一般的です。
退職勧奨は、あくまでも退職を促す限度で行わなければなりません。
威圧的な言動で退職を迫ったり、執拗に説得したりすれば退職「強要」となり、合意退職の形をとれたとしても不当解雇で訴えられるおそれがあります。

退職の合意ができたら、あとから「言った・言わない」のトラブルが生じないように、書面で証拠を残すようにしましょう。

従業員から退職願や退職届を提出してもらう形でも構いませんが、できれば退職合意書を作成し、双方が署名捺印する方が望ましいといえます。

退職合意書には、円満に退職の合意が成立したことと、退職条件として取り決めたことの他には互いに何の請求もしないという文言を記載しておくことで、トラブルの防止に役立ちます。

会社を経営していると、様々な事情で従業員に辞めてもらいたいという場面もあるものです。
従業員が退職を望む場合はよいですが、そうでなければ慎重に手続きを進める必要があります。

従業員の退職手続きなど雇用の問題でお困りの方は、下関・宇部・周南・岩国の企業法務弁護士、弁護士法人ONEにご相談ください。

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