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懲戒解雇はどのような場合にできる?

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従業員に重大な非違行為があった場合には、懲戒解雇をしなければならないこともあるでしょう。

ただ、懲戒解雇は懲戒処分の中でも最も重いものですので、慎重に行わなければ従業員との間で深刻なトラブルに発展するおそれがあります。

1.懲戒解雇とは

懲戒解雇とは、重大な非違行為があった従業員に対して解雇を命じる懲戒処分のことです。

使用者と労働者は労働契約に基づく対等な契約関係にあります。ただ、労働者は企業の秩序を守るべき契約上の義務を負い、万が一、企業秩序を乱した場合には使用者に懲戒権が認められます。

この懲戒権に基づいて企業が行いうる処分のひとつが、懲戒解雇です。

2.懲戒解雇が有効となる要件

懲戒解雇は懲戒処分の中でも最も重いものですので、以下の3つの要件をすべて満たす場合でなければ認められません。

1.就業規則等に根拠規定があること
2.客観的に合理的な理由があること
3.社会通念上の相当性があること

就業規則等に規定がなくても普通解雇は可能と考えられていますが、懲戒解雇ができるのは就業規則等に根拠規定があり、かつ、解雇事由がその規定の内容に該当する場合に限られます。

また、客観的に合理的な理由が必要ですので、従業員が何らかの犯罪の容疑で逮捕や起訴された場合でも、有罪判決が確定するまでは慎重に様子を見た方がよいでしょう。

重大な非違行為が明らかに認められた場合でも、その従業員を即時解雇することが社会通念に照らして重すぎないかという考慮も必要となります。

3.懲戒解雇で守るべき手順

懲戒解雇は最も重い処分ですので、手続き上の適正さも求められます。解雇無効のトラブルを防止するためにも、以下の手順を守って行いましょう。

(1)事実の調査
まずは、事実を綿密に調査することです。非違行為の疑いだけで懲戒解雇を命じることは許されません。関係者からの聴き取りや証拠書類の収集など、できる限りの調査を尽くして事実を明らかにしましょう。

(2)弁明の機会を与える
解雇対象となる従業員に弁明の機会を与えることが重要です。単なる言い訳に応じる必要はありませんが、事実誤認の可能性もありますし、使用者が知らなかった社内の事情が発覚することもありますので、本人の言い分にも耳を傾けましょう。

(3)就業規則上のルールを守る
懲戒解雇は就業規則等の根拠規定に基づいて行うものですので、予め定められたルールを守る必要があります。懲戒委員会の審議にかける、労働組合または労働者の代表者と協議するなどのルールが定められている場合には、所定の手続きを怠らないように注意しましょう。

(4)懲戒解雇通知書を交付する
懲戒解雇することに決まったら本人に通知することになりますが、その際には懲戒解雇通知書を作成して交付しましょう。文書で通知することにより、適正な理由と手続きで処分を行ったという証拠を残すことにもなります。

4.懲戒解雇する際の注意点

懲戒解雇をするときは、以下の点にも注意しましょう。

(1)退職金は支払わなくてもよい?
懲戒解雇では、必ずしも退職金を支払う必要はありません。ただし、不支給とする場合には、予め就業規則等でその旨を定めておくことが必要です。

ただし、退職金には賃金の後払いという性質もあるため、非違行為の内容や程度によっては不支給が違法となる可能性もあります。

懲戒解雇を命じた従業員から退職金を主張された場合には、弁護士にご相談の上で対処することをおすすめします。

(2)解雇予告手当を支払う必要はある?
懲戒解雇の場合、労働基準監督署の認定を得れば解雇予告を支払う必要はありません。ただ、実務上は認定を受ける手間を省略するためにあえて解雇予告手当を支払うこともよくあります。

(3)有給休暇はどうなる?
有給休暇は労働者が在職中に取得するものです。有効な懲戒解雇を命じた場合、その時点で労働契約が解消されるため、有給休暇の取得権も消滅します。したがって、その従業員に有給消化をさせる必要はありません。

懲戒解雇は最終手段であり、特定の従業員の非違行為によって企業秩序が乱され、もはや許しがたいという場合でなければ認められません。従業員の非違行為でお困りのときは、弁護士にご相談いただければ、最善の対処法をアドバイスいたします。

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