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従業員に起訴休職を命じるときの注意点

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従業員が何らかの犯罪の容疑で起訴された場合、会社が休職を命じる「起訴休職」の措置がとられることがよくあります。

起訴休職そのものは合法な制度ですが、意外に厳しい条件を満たす場合でなければ法律上は無効となってしまうことに注意が必要です。

1.起訴休職とは

起訴休職とは、従業員が何らかの犯罪の容疑で起訴されたときに、会社が休職を命じる処分のことです。
起訴されて被告人となった人も、有罪判決を言い渡されるまでは無罪と推定されます。しかし、起訴された従業員をそのまま就労させると企業活動にさまざまな支障をきたすおそれもあります。

そこで、企業活動の円滑な遂行を守るために認められているのが、起訴休職という制度です。

2.起訴休職が有効となるための条件

起訴休職は、企業活動の円滑な遂行を守るために必要な限度でしか命じることができません。
また、まだ有罪と決まったわけではない従業員には、働いて収入を得るという正当な権利もあります。

このような考慮から、裁判例上、以下の条件のうち(1)から(3)の少なくとも1つを満たし、かつ、(4)も満たす場合にのみ起訴休職が有効となるとされています。

(1)企業の対外的信用が失墜するおそれがあること
(2)職場の秩序を維持できなくなるおそれがあること
(3)労務の提供が不安定となり、業務に支障が生じるおそれがあること
(4)起訴された事実で懲戒処分を下す場合と比べて著しく不均衡でないこと

業務外で軽微な犯罪が行われたに過ぎない場合は、(1)と(2)の条件を満たさない可能性があります。
起訴された従業員が身柄拘束を受けていない場合は、(3)の条件を満たさない可能性が高いです。
起訴された事実が「減給」の懲戒処分に相当する場合に、長期間にわたって無給の休職処分を命じることは④の条件を満たさないと考えられることに注意が必要です。

3.起訴休職中は賃金を支払わなくてもよい?

起訴休職中の従業員に対しては、賃金を支払う必要はありません。なぜなら、休職に至った原因は企業側にはなく、従業員側にあるからです。

ただし、起訴休職が上記の要件を満たさない場合は無効となります。その場合は企業側の都合で休職を命じたことになりますので、賃金の支払い義務が生じます。

4.起訴休職はいつからいつまで?

起訴休職は、起訴された従業員をそのまま就労させることで企業活動の円滑な遂行に支障が生じることを防ぐために認められた制度です。したがって、起訴休職を命じることができるのは、従業員が起訴されたときから、刑事裁判の判決が確定するまでです。

有罪判決が確定した後は、認定された事実に基づいてどのような懲戒処分を下すのかという問題となります。

5.無罪判決が確定したらどうなる?

起訴休職が前述の条件を満たして有効である限り、刑事裁判で無罪判決が確定したとしても起訴休職は有効なままです。遡って無効となるわけではありませんし、起訴休職中の賃金の支払い義務が生じるわけでもありません。

ただし、起訴後に従業員が保釈された場合や、判決確定前でも第1審で無罪判決が言い渡された場合などでは注意が必要です。その時点で起訴休職の条件を満たさなくなる可能性もあるので、起訴休職を継続するかどうかを検討する必要があるでしょう。

6.起訴休職は就業規則で定めておこう

就業規則に休職に関する一般的な規定があれば、起訴休職についての明文規定がなくても、条件を満たす場合には起訴休職を命じることが可能です。

とはいえ、従業員とのトラブルを回避するためには、就業規則に明文規定を設けておいた方がよいでしょう。
弁護士にご相談いただければ、就業規則の作成・改訂だけでなく、実際に従業員が起訴された場合の対処についてもサポートいたします。

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