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後遺障害等級1級の症状と慰謝料
1.後遺障害等級1級とは
後遺障害のなかでも、もっとも重い等級が、後遺障害等級1級です。
常に介護を要する場合と、寝たきりの生活にならないまでも、両眼の視力や両手足に大きな障害が残存する場合がこれに該当します。認定される場合、労働能力喪失率は100%となり、事故前のような仕事や生活を取り戻すことは困難となります。
もっとも重い等級のため、慰謝料などの賠償金額は、他の等級と比較すると高額になります。
しかし、保険会社の提示する賠償金額と弁護士基準では受け取る金額が大きく異なることがあるので注意が必要です。
重い後遺障害を抱えたその後の生活を見据えて、適切な賠償金額を獲得するためには、後遺障害の症状や慰謝料額をよく理解することが重要です。
2.表と解説
後遺障害等級1級は、常に介護を要する場合と、それ以外の場合がありますが、常に介護を要する場合以外では、下記の6つの症状(1号〜6号)を指します。
慰謝料については、表内の自賠責基準(最低保証金額)、任意保険基準(保険会社が提示する金額)、弁護士基準(被害者が本来受け取るべき適切な金額)をご参照ください。
等級 | 後遺障害 | 自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準(赤い本) | 労働能力喪失率 |
---|---|---|---|---|---|
第1級 | 1号・両眼が失明したもの | 1150万円 | 1600万円 ※それぞれ独自に決定するため、あくまで目安 |
2800万円 ※2021年民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準参照 |
100% |
2号・咀嚼および言語の機能を廃したもの | |||||
3号・両上肢をひじ関節以上で失ったもの | |||||
4号・両上肢の用を全廃したもの | |||||
5号・両下肢をひざ関節以上で失ったもの | |||||
6号・両下肢の用を全廃したもの |
失明とは眼球を摘出(亡失)した状態、明暗がわからない状態、明暗が辛うじてわかる状態のことです。
明暗が辛うじて分かる状態とは、暗闇において目の前で点滅させた照明の明暗が判別できる(光覚弁=光の感覚がわかる)場合と、目の前で手のひらを上下左右に動かしてその動きの方向が分かる(手動弁=手の動きがわかる)場合をいいます。
矯正視力で0.01未満の場合も1級の1号となります。
咀嚼機能を廃するとは、経口的に食物などを摂取することができず、チューブで口や鼻や胃に流動食を注入して栄養補給することです。
言語機能を廃するとは、子音を構成する4種の語音のうち、3種類以上の発音ができないことです。
4種の語音とは
・口唇音(ま行・ぱ行・ば行・わ行の音および「ふ」)
・歯舌音(な行・た行・だ行・ら行・さ行・ざ行の音および「しゅ」「し」「じゅ」)
・口蓋音(か行・が行・や行の音および「ひ」「にゅ」「ぎゅ」「ん」
・喉頭音(は行の音)
のことをいいます。
咀嚼機能と言語機能との両方の機能を失うのが1級2号で、片方の場合は3級2号に該当します。
ⅰ)3号は両方の腕を肘関節以上で失った状態
肩関節から肘関節にかけて切断や離断(骨同士が切り離されること)したものを言います。
ⅱ)4号は両腕の機能が失われた状態
腕そのものは失われていなくても、三大関節(肩関節・肘関節・手関節)や足指が麻痺や強直(固まること)するなどして可動域が通常の10%以下になったものです。
ⅲ)5号は両足をひざ関節以上で失った状態
股関節から膝関節にかけて切断や離断したものを言います。
ⅳ)6号は両下肢の機能が失われた状態
足そのものは失われなかったものの、下肢の三大関節(股関節・膝関節・足関節)や足指が麻痺や強直して可動範囲が通常の10%以下になったものです。
3.大きな後遺障害が残る場合は弁護士相談へ
今回はもっとも重篤な症状、後遺障害等級1級を解説しました。これらの症状に加えて、食事や入浴などの介護が必要になると「介護を要する後遺障害」の1級や2級など別の分類となります。
また別のコラムで取り扱った「併合」により等級が繰り上がって併合1級となる場合もあります。
後遺障害の併合とは(リンク:https://bengoshi-one.com/koutsujiko/columns/heigou/)
適切な後遺障害等級認定と適切な賠償金額の獲得には、ぜひ後遺障害問題を熟知し、医療知識も豊富な弁護士にご相談下さい。