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後遺障害等級12級の症状と慰謝料

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1.後遺障害等級12級とは

後遺障害等級12級は、後遺障害等級のなかでも年間の認定件数が多く、2020年は全体で2番目に多い8036件が認定されています(1番は14級の28593件)。該当する症状は、目や耳・歯の障害に加え、手足先の欠損、骨の変形や関節の不具合などがあります。後遺障害等級のなかでは軽い等級に当たりますが、体の一部分に痛みや不具合は一生残ります。12級に該当する後遺障害が残存した場合は、後遺障害等級認定を受け、適切な賠償金を受け取ることが重要です。

2.後遺障害等級12級の表と解説

後遺障害等級12級は、下記の14つの症状(1号〜14号)を指します。
慰謝料については、表内の自賠責基準(最低保証金額)、任意保険基準(保険会社が提示する金額)、弁護士基準(被害者が本来受け取るべき適切な金額)をご参照ください。

等級 後遺障害 自賠責基準 任意保険基準 弁護士基準 労働能力喪失率
12級 1号
一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
94万円 100万円
※それぞれ独自に決定するため、あくまで目安
290万円
※2021年民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準参照
14%
2号
一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3号
七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4号
一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5号
鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
6号
一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
7号
一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
8号
長管骨に変形を残すもの
9号
一手のこ指を失つたもの
10号
一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
11号
一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
12号
一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
13号
局部に頑固な神経症状を残すもの
14号
外貌に醜状を残すもの
1号:片方の眼球に著しい調節機能障害か、運動障害が残った状態
調節機能障害とは、近くの物や遠くの物を見た際にピントを調節する機能に障害が生じることです。
著しい調節機能障害とは、調節する機能が半分以下になる状態をいいます。障害が残らなかった眼と比較して判断されます。

著しい運動障害とは、眼球の注視野(頭を動かさずに眼の動きだけで直視できる範囲のこと)が半分以下になる状態をいいます。こちらも障害が残らなかった眼と比較して判断されます。

2号:片方の眼のまぶたに著しい運動障害が残ったもの
まぶたの著しい運動障害とは、まぶたを開けた際に、十分に開かずに瞳孔(黒目の中心)が隠れたままの状態になることや、または、まぶたを閉じた際に、十分に閉じずに瞳孔や角膜(黒目)の部分を完全に覆うことができない状態をいいます。
3号:合計7本以上の歯に対して歯科補綴(しかほてつ)を加えた状態
歯科補綴(しかほてつ)とは、失われた歯や欠損した歯に対して、義歯の装着、ブリッジ治療・インプラント治療などで歯を補う処置のことをいいます。
4号:片方の耳の耳殻(耳介)の大部分を欠損した状態
耳殻(耳介)とは、内耳、中耳、外耳のうち、外耳の一部で、外側に張り出している部分のことをいいます。
耳殻(耳介)を半分以上欠損した場合が12級4号に該当します。
5号:鎖骨、胸骨、肋骨(ろっこつ)、肩甲骨、または骨盤骨に著しい変形を残すもの
著しい変形とは、裸体になった時に、骨の変形が明らかにわかるものをいいます。
6号:片方の腕の三大関節のうち、1関節の機能に障害が残った状態
腕の三大関節(肩・肘・手首)のうち1つの関節について、関節可動域が4分の3以下に制限された状態や、手のひらの回内・回外運動の可動域が2分の1になった状態をいいます。
7号:片方の足の三大関節のうち、1関節の機能に障害が残った状態
足の三大関節(股・膝・足首)のうち1つの関節について、関節可動域が4分の3以下に制限された状態をいいます。
8号:長管骨に変形が残った状態
長管骨とは、手や足にある長い骨の総称です。腕の上腕骨(じょうわんこつ)・橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)、足の大腿骨(だいたいこつ)、脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)の6つを指します。
変形とは、外部から見てわかるほど変形・屈折している状態、骨が癒合不全な状態、骨端部(骨の端っこの部分)が欠損している状態、骨の直径が細くなってしまった状態、骨がねじ曲がった状態を指します。

癒合とは骨折が治ることで、癒合不全とは骨折したところが一定期間を過ぎても癒合しないことです。

9号:片方の手のこ指を失った状態
交通事故により左右どちらかの手の小指を失う状態をいいます。指を失うとは根本からなくした場合だけでなく第二関節から無くした場合も含みます。
10号:片方の手の人差し指、中指、または薬指の機能を廃した状態
指の長さが半分になった状態や、第二関節より先の可動域が2分の1になった状態、指先の痛みや温度、触感などの感覚が完全に失われた状態をいいます。
11号:片方の足の人差し指を失ったか、人差し指と他の2本の指を失ったか、中指・薬指・小指を失った状態
片足の人差し指を根元から失った状態や、片足の人差し指ともう1本の指を根本から失った状態、片足の中指、薬指、小指を根元から失った状態をいいます。
12号:片方の足の親指または他の4本の指の機能を廃した状態
この場合の廃するとは、親指の指先から第一関節までの長さが2分の1になった状態、親指以外の4本の指が根元から第一関節までで切断された状態、親指以外の4本の指の第二関節の可動域が半分になった状態をいいます。
13号:手や足など体の一部分に頑固な神経症状が残った状態
神経症状とは、中枢神経や末梢神経などの障害により、麻痺や痛み・しびれなどの自覚症状が残る状態です。
主に「むちうち」の症状で認定されることが多く、むち打ちの自覚症状を画像所見と神経学的異常所見により、証明できる場合が該当します。
14号:外貌に醜状が残った状態
外貌とは、頭や顔面や首など、日常で露出して人目に付く体の部分をいいます。
醜状とは、傷や欠損のことをいい、線状痕が3cm以上の場合は12級14号に該当します。
5cm以上の線状痕がある場合は、「相当程度の醜状」として9級16号に該当します。

3.後遺障害等級認定と慰謝料は、弁護士にご相談ください

本ページでは、後遺障害等級認定12級を説明しました。12級は、一般的に後遺障害等級認定が難しいと言われる「むちうち損傷」も含まれる等級です。検査や書類作成など適切な対応を取らなければ、辛い症状が出ているにもかかわらず等級認定を得られないという場合もあります。慰謝料を獲得するためにも、ぜひ交通事故で頼れる弁護士にご相談ください。