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後遺障害等級7級の症状と慰謝料

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1.後遺障害等級7級とは

後遺障害等級7級は、数字で見れば後遺障害1級〜14級のちょうど折り返し地点です。しかし労働能力喪失率56%と事故前の半分以上も働けない状態になり、体の各部位に様々な障害が残存する重い後遺障害です。身体のどの部位でも、失い、機能しなくなれば、その後の人生に多大な影響を与えることはまちがいありません。慰謝料などの適切な賠償金額を把握し、無用な損失を防ぐことはとても重要となります。

2.後遺障害等級7級の表と解説

後遺障害等級7級は、下記の13つの症状(1号〜13号)を指します。
慰謝料については、表内の自賠責基準(最低保証金額)、任意保険基準(保険会社が提示する金額)、弁護士基準(被害者が本来受け取るべき適切な金額)をご参照ください。

等級 後遺障害 自賠責基準 任意保険基準 弁護士基準 労働能力喪失率
7級 1号
一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
419万円 500万円
※それぞれ独自に決定するため、あくまで目安
1000万円
※2021年赤本参照
56%
2号
両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
3号
一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
4号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
5号
胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
6号
一手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの
7号
一手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
8号
一足をリスフラン関節以上で失ったもの
9号
一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
10号
一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
11号
両足の足指の全部の用を廃したもの
12号
外貌に著しい醜状を残すもの
13号
両側の睾丸を失ったもの
1号:一眼が完全に失明し、他眼の視力も0.6以下になった状態
失明とは眼球を摘出(亡失)した状態、明暗がわからない状態、明暗が辛うじてわかる状態のことです。眼球・視神経・脳など様々な原因によって引き起こされますが、その理由が何かは問われません。
裸眼ではなくメガネやコンタクトレンズで矯正した視力で判定されます。
2号:両耳の聴力が、40㎝以上の距離では、普通の話声を解することが出来ない状態
2号にあてはまる症状は2パターンあり、両耳の平均純音聴力レベルが70デシベル以上になった場合若しくは、両耳の平均純音聴力レベルが50デシベル以上であり、かつ最高明瞭度が50%以下の場合をいいます。

聴力レベルの指標は20デシベル以内であればほぼ正常、30~40デシベルであれば軽度難聴(小さな声が聴きにくい)、60デシベルであれば中等度難聴(日常会話に支障あり)、80~90デシベルであれば高度難聴(日常会話ほぼ聞こえない)となります。
最高明瞭度とは言葉の聞き取りやすさ(音が聞こえても内容が把握できない場合など)の指標です。

3号:一耳が聴こえなくなり、他耳が1m以上の距離では普通の話声を解することが出来ない状態
3号も耳の後遺障害です。一耳の平均純音聴力レベルが90デシベル以上であり、他耳の平均純音聴力レベルが60デシベル以上の場合をいいます。
4号:脳や神経の損傷により労働能力に支障が生じ、簡単な仕事しかできなくなった状態
仕事そのものには従事できるものの、平均的な人の半分程度まで労働能力が低下している場合をいいます。

脳の損傷による高次脳機能障害は、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続・持久力、社会的行動能力(協調性など)の4能力がどの程度失われているかで判断されます。

5号:胸腹部臓器の障害により労働能力に支障が生じ、簡単な仕事しかできなくなった状態
胸からお腹にかけての臓器(呼吸器・循環器・消化器・泌尿器)に問題が生じる場合で、例えば心臓にペースメーカーを植え込んだため、労働が制限される場合が該当します。
6号:片方のおや指を含む3本、またはおや指以外の4本の指を失った状態
指を失うとは、おや指であればIP関節(指の中間部分の関節)、その他の指であれば第2関節から先を失った場合をいいます。
7号:片方の手のすべての手指、またはおや指を含む4本の指が機能を失った状態
指そのものが失われてなくても、神経が一部切断された場合や麻痺し、動かなくなった場合をいいます。
8号:片方の足をリスフラン関節以上で失った状態
リスフラン関節とは、5本の中足骨(足指の骨)と足の甲の骨の間にある関節のことです。
9号:片方の腕に偽関節が残り、著しい運動障害を残す状態
「偽関節」とは、骨折した骨が正常にくっつかず、また骨がつく過程で停止した状態をいいます。
偽関節が出来てしまい、骨折したまま、ぐらつきが残るため、常にプラスチックや金属の硬性補装具がなければ、正常に手を動かすことができなくなる場合が該当します。
10号:片方の足に偽関節が残り、著しい運動障害を残す状態
9号と同様に、偽関節のため、常にプラスチックや金属の硬性補装具を必要とし、装具がなければ正常に足を動かすことができなくなる状態をいいます。
11号:両足の指の全部の機能が失われた状態
両足の指が一部切断や麻痺で指が使えなくなることをいいます。
利き足かどうかは関係なく、また片足のみの場合は、9級15号に該当します。
12号:見た目に著しい醜状を残す状態
見た目に後遺障害が残るなかで、最も重たいのがこの7級12号の症状です。
著しい醜状とはキズや欠損のことをいい、
・頭に残る手のひら以上の大きさの傷跡、頭蓋骨に手のひら以上の大きさの欠損
・顔面に残る鶏卵以上の大きさの傷跡、または10円銅貨以上の大きさの組織陥没
・首に残る手のひら以上の大きさの傷跡
が残ったものをいいます。
かつては同じ症状でも男女の等級が別れていましたが、現在は男女の等級は同一になっています。
13号:交通事故が原因で、男性なら両方の睾丸、女性なら両方の卵巣を失った状態
男性の場合、たとえ睾丸が残っていても、精子を作る機能が失われていれば該当します。同様に女性の場合も、たとえ卵巣が残っていても、卵子を作る機能が失われていれば該当します。

3.事故直後からの弁護士への相談が大切です。

後遺障害等級7級について解説しました。冒頭でも申しあげましたが、どれも体の各部位に様々な障害を残存させる重い後遺障害です。事故後、多大なハンディキャップを背負った上で生活していくには、事故の苦痛やケガに見合うだけの賠償金が必要です。適切な後遺障害等級認定や保険会社との示談交渉などは、事故直後から信頼できる弁護士に早めにご相談ください。