自分で書く遺言は,案外やっかい

2019年10月8日投稿 | 投稿者: 弁護士 若松俊樹

将来に備えて,自分の考えるとおりに子どもや孫に遺産を分けたいと思われる方は多いと思います。そのために,自分で遺言を書きたいと思われるかもしれません。ただ,自分で遺言を作るのはそう簡単ではありません。

財産目録に関して一部の例外が最近の相続法改正で定められましたが,民法では原則として自筆での遺言(自筆証書遺言)を書くには,「遺言者がその全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなくてはならない」とされています(民法968条1項)。

ですので,そもそも字が書けない人は自筆で遺言が作れないことになります。全文パソコンなどで打って作ることもできません。

また,日付,氏名,押印も必要です。押印に関して,押印に代えて花押にすることはできないという判断が,最近の最高裁判決で出されています。

自筆証書遺言が上記の規定を満たしていない場合,遺言の一部ではなく「全部が」無効となってしまい,遺言が存在しないのと同じ状態になってしまいます。これでは,遺言者の意思を実現するどころではなく,相続人の間で一から遺産分割の話し合いをしなくてはならなくなってしまいます。遺言を自分で書くためにがんばった努力がすべて水の泡です。

自筆証書遺言を訂正するときも,訂正場所の指示・訂正する旨を書いて,都度署名押印しなくてはなりませんから(民法968条3項),大変手間がかかります。

私は,遺言を残したいというご相談を受けた場合,原則として公正証書遺言を勧めています。原則としてご本人が公証役場に出向く必要がある,若干の費用が掛かる(具体的場合によりますが,数万円程度になることが多いと思われます。),利害関係人以外の証人が二人必要である(その二人には遺言の内容が知られることになる。)などの手間はありますが,法律に従って公証人が遺言を作成してくれるため,遺言が無効になってしまうリスクは相当程度低減させることができます。また,遺言書が公証役場で保管されるため,偽造・変造の危険も少なくなります。そのような理由から,私は遺言作成の依頼は公正証書遺言で受けることにしています。

ちなみに2020年7月10日から,自筆証書遺言を法務局が保管する制度が始まります(遺言書保管法)。自筆証書遺言を作成・保管する上でのハードルを少しでも下げるためにこのような制度を設けたのでしょうが,先に述べたような形式に厳格な定めがある限り,自筆証書遺言を作る厄介さが変わるものではありませんし,思惑通りに自筆証書遺言の作成・保管が増えることはないだろうと私はみています。

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