解決事例一覧

住所がわからない相手に対して,裁判を行った事案

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1.依頼のきっかけ

Aさんは、自らの所有である土地の登記簿上の所有者が、前の所有者の共有名義のままとなっていることに気づきました。
そこで、所有権移転登記手続を求めるため,訴訟を提起することとなりましたが、前の所有者らの中に、海外に移住した方が含まれていることがわかりました。
訴状を送達するために、被告の住所の調査が必要でしたが、住民票上の住所には国名しか記載されておらず、詳しい住所はわかりませんでした。

 

2.交渉の経緯

今回のケースでは被告となる相手方の親族の連絡先が分かっていました。まずは親族の方々に、住所を照会する手紙を送りました。しかし、回答は得られませんでした。古い時代の戸籍等の附票も市町村に残っていましたが、昭和の中ごろのものを見ても、住所の記載は国名のみ、住定年月日も不詳でしたので、ずいぶん昔に外国へ渡られ、親族とのお付き合いも途絶えていたのかもしれません。

そこで,弁護士会を通じて、外務省に対し所在調査を申し込んだところ、領事館の資料に保存されていた記録から回答を得ました。しかし、そこに記載された住所は、現在ではすでに使用されていない地名であり、実際その住所に宛てて国際郵便を送ってみたものの、やはり「宛先不完全」で配達できませんでした。

結論として、その被告の方の住所、居所等、訴状を送達すべき場所が判明しないとして、裁判所に対し公示送達による送達を申し立てました。申立書には、調査結果を詳しく述べ、添付資料で補完しました。その結果、無事に訴状等が公示送達され、裁判を進めることができました。

 

3.担当弁護士から一言

裁判を起こすには,訴状を裁判所に提出しなければなりません。提出後,裁判所は被告となる者に原告から提出された訴状を郵送で送付し,裁判期日に出頭するよう求めます。
そのため,被告となる訴えられる人の現住所等を原告で調査する必要があります。しかし,住民票の異動を行っていない人や外国籍の人などは住所を調査することが容易でないこともしばしばあります。
そこで,民事訴訟法では,被告の住所がわからないときには公示送達という送付の方法を認めています。もちろん原告側で一定の調査を行った上でないと裁判所も公示送達を認めてはくれません。

公示送達は,裁判所の掲示場に訴状などの送付すべき書類を掲示し,2週間が経過することによって,訴状が被告に送達されたことと扱う制度です。公示送達の場合には,被告が裁判期日に出頭しないことが多く,被告が不在のまま裁判が進められることとなります。裁判官が原告の主張に理由があると判断すれば,被告の反論を待たずに判決が下され,権利が実現されます。

本件の事案も被告の住所がわからなかったため,一定の調査をした上で公示送達の申立てを行い,権利を実現することが事例になります。被告の住所がわからなくても諦めず,まずは弁護士に相談をしてください。

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