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賃料交渉について
土地や建物の賃料は、賃貸借契約で取り決めたとおりに支払わなければなりません。
しかし、不動産の賃貸借契約は長期間にわたって継続することが多いものです。時の経過によって、当初に取り決めた賃料が実情に見合わないものになることも少なくありません。
そのため、状況によっては賃借人から賃料の減額を求めたり、賃貸人から賃料の増額を求めたりして、交渉になることもあります。
1.賃料交渉は自由にできる
賃貸借契約の内容を一方的に変更することはできませんが、当事者双方が合意すれば自由に変更できます。
そのため、賃料の増額や減額を求めて交渉を持ちかけることは、いつでも可能です。
一般的なアパートやマンションの一室の場合、月数千円程度なら交渉によって変更できる可能性が十分にあります。
2.賃料交渉のポイント
交渉によって賃料の変更が可能とはいえ、単に「賃料を下げてほしい」、「賃料を上げたい」というだけでは、合意が得られる可能性は低いでしょう。そのため、賃料交渉の際は根拠を示すことが重要です。
賃料交渉で有効となる具体的な根拠として、主に以下のようなものが挙げられます。
・立地条件
・築年数
・空室の有無や数
・周辺の環境の変化
・周辺の類似物件の賃料相場
・税制や物価の変動など社会的な経済事情の変化
(1)賃借人側の注意点
空室が多かったり、周辺の類似物件と比べて賃料が高くなっているような場合は特に、賃料の減額に応じてもらいやすいといえます。
ただし、「減額してもらって当然だ」という態度では賃貸人の理解が得られにくいので、願いする姿勢で穏便な交渉を心がけましょう。
ある程度の期間は住み続けていて、その間、遅滞なく賃料を支払い続けてきたという事情があれば、賃貸人の理解も得られやすくなるはずです。
また、不況による減収や解雇、病気など個人的な事情によって支払いが厳しい場合も、正直に事情を伝えて交渉してみることをおすすめします。
賃貸人としても、退去されるよりは住み続けてもらう方が得策と考える傾向にあるので、多少の減額には応じてもらえる可能性があります。
(2)賃貸人側の注意点
周辺の類似物件と比べて賃料が低くなっていたり、不動産に関する増税が行われたり、物価が高騰したりしている場合は、賃料の増額に応じてもらいやすいといえます。
ただし、一方的に金額をつり上げて強硬な姿勢で交渉すると、賃借人が退去を選択するおそれがあります。
最近は増税や物価の高騰で生活が苦しくなっている賃借人も多いので、穏便な交渉によって理解を求めることが大切です。
3.賃料交渉が決裂したときの対処法
直接の交渉が決裂した場合は、裁判所の手続きで賃料の増額や減額を請求することになります。
具体的には、まず賃料増額(または減額)請求調停を申し立てます。調停では、裁判所の調停委員を介して当事者が話し合い、合意による解決を目指します。
調停で話し合いがまとまらない場合は、裁判(訴訟)の提起が可能となります。借地借家法の第11条(借地の場合)および第32条(借家の場合)で賃料増額(または減額)請求権が認められているので、一定の事情を証明できれば判決による強制的な解決が可能です。
「一定の事情」としては、借地借家法で以下のようなものが挙げられています。
・土地や建物に対する税金などの負担の増減
・土地や建物の価格の上昇または低下
・その他の経済事情の変動(増税・減税や物価の高騰など)
・周辺の類似物件の賃料相場
解雇や病気による収入の減少などといった個人的な事情は、直接的な請求の根拠にはならないことに注意が必要です。個人的な事情で賃料の支払いが厳しい場合は、できる限り話し合いによる解決を図った方がよいでしょう。
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