コラム一覧
宗教団体への献金は返還してもらえる?
安倍晋三元首相が銃撃された事件で逮捕された山上徹也容疑者が、逮捕後に「母親が入信して多額の献金をしていた宗教団体に対して大きな恨みを抱いていた」と供述したことが社会の注目を集めました。
実際に一部の宗教団体は、信者に対して多額の献金を求めることがあるようですが、献金した信者は幸せになるどころか、経済的に困窮して苦しい生活を余儀なくされることが多いものです。
では、宗教団体に対して行った多額の献金を返金してもらうことは法的に可能なのでしょうか。
1.旧統一教会は献金の一部を返金した
報道によると、山上容疑者の母親は旧統一教会(現「世界平和統一家庭連合」)に対して少なくとも1億円を献金し、自己破産したとのことです。
これに対して教団側は、5000万円を返金したと取材陣に対してコメントしています。
教団側の説明によれば、母親側との合意によって返金したということです。
この返金が法的な根拠に基づくものであるのか、5000万円という金額が妥当であるのかについては、報道された情報だけでは判断することが難しい状況です。
2.判例上、返金請求が認められることもある
元信者らが宗教団体に対して献金等の返金を求めた裁判例のリーディングケースとして、福岡地方裁判所平成12年4月28日判決があります。
前提として、信教の自由は憲法で保障された重要な基本的人権であり、最大限に尊重されなければなりません。
この判例でも、宗教団体が信者に対して献金等を求める行為は、社会的に正当な目的に基づき、手段や結果も社会通念に照らして相当である限りにおいて、正当な宗教活動の範囲内にあり違法ではないとしています。
ただ、その範囲を逸脱した場合には違法となり、信者側は不法行為を理由として損害賠償を請求できると判断しました。
違法になるケースの例としては、以下のようなものが挙げられています。
・先祖の因縁等の話によってことさらに相手の不安をあおるなどの不当な手段によって支出させた場合
・支出者の年齢、家庭環境、資力、社会的地位などから考えて、不相当に高額の金銭を支出させた場合
この判例の考え方によれば、宗教団体によって洗脳され、法外な献金をさせられた場合には、返金請求が認められる可能性が高いといえます。
3.全額の返金請求が認められるとは限らない
宗教団体が献金等を求める行為が違法とされるのは、あくまでも目的や手段・結果が社会的相当性を逸脱した場合と範囲に限られます。
したがって、法外な金額を献金した信者であっても、入信した当初に遡って全額の返金請求が認められるわけではないケースが多いと考えられます。
おそらくですが、旧統一教会も上記の判例を当然に知っていて、半額程度の返金で「示談」のような形をとったのではないかと推測されます。
4.契約の取消しで返金可能な場合もある
宗教団体が販売するグッズなどの物品を購入した場合、契約書を受け取ってから8日以内であればクーリングオフが可能です。
クーリングオフをすると売買契約が取り消されるため、返金を請求できます。
クーリングオフの期間が過ぎた場合でも、霊感商法による契約は消費者契約法に基づいて取消し、返金請求できる可能性があります。
身内の方や友人・知人の方が宗教団体に多額の献金をしている場合、まずは洗脳を解く必要があるでしょう。
信教の自由は尊重しなければなりませんが、金銭面で社会的に相当な範囲を逸脱している場合には、カウンセラーや専門の医師のアドバイスを受けることが望ましいといえます。
献金の問題や霊感商法による詐欺被害の解決については、下関・宇部・周南・岩国の弁護士法人ONEにご相談ください。