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刑事事件と民事事件の違い

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刑事事件と民事事件はどちらも法律に則って行われる手続きですが、まったく別の手続きであり、様々な違いがあります。

1.刑事事件と民事事件の違い

刑事事件と民事事件の主な違いは、以下のとおりです。

(1)目的の違い
刑事事件は、犯罪の容疑をかけられた人が本当に罪を犯したのか、犯したとすればどのような刑罰を与えるべきかを定めるための手続きです。
民事事件は、私人間のトラブルについて双方の権利や利益に配慮しつつ、妥当な解決を図るための手続きです。

ひとことで言えば、犯罪者の処罰を目的としているのか(刑事事件)、トラブルの解決を目的としているのか(民事事件)という違いがあります。

(2)当事者の違い
刑事事件で裁判を起こせるのは、検察官のみです。訴えられた人は、被告人となります。弁護人は、被告人からは独立した立場で刑事裁判に参加するものであり、被告人の代理人ではありません。
民事事件では、誰でも裁判を起こせます。訴えられた人は、被告となります。

したがって、刑事事件の当事者は「検察官(国の代表者)vs被告人」であるのに対して、民事事件の当事者は「私人vs私人」であるという違いがあります。

(3)裁判手続きの違い
刑事事件の裁判では、検察官が被告人の犯罪事実を立証する義務を負います。証拠調べの結果、合理的な疑いが残る場合は無罪となります。被告人が自白していたとしても、それを唯一の証拠として有罪判決が言い渡されることはありません。

民事事件では、基本的に訴えた側(原告)が事実を立証する義務を負います。証拠調べの結果、より真実らしいと考えられる側の主張が判決で認められます。被告が自白した事実は真実とみなされ、証拠なしで認定されます。

(4)強制力の有無の違い
刑事事件では、捜査機関(警察や検察)が証拠を確保するために、被疑者の逮捕・勾留や捜索、差押えなどを強制的に行う権限が一定の条件のもとに認められています。
民事事件でも裁判前に証拠を保全するための手続きが用意されていますが、目的物の所持者の意思に反してまで証拠を確保できるような強制力は認められていません。

(5)和解の有無の違い
刑事事件に和解はありません。検察官と被告人の合意により刑罰の内容を決めることはできないのです。
それに対して、民事事件には和解があります。私人間の権利関係は「私的自治の原則」に委ねられているため、当事者が合意するのであれば、どのような形でも解決できます。

2.刑事事件と民事事件の共通点

刑事事件と民事事件には、次のような共通点もあります。

(1)裁判所の判決により解決する
刑事事件でも民事事件でも裁判所の判決には強制力があるため、最終的な解決が図られます。
例えば、刑事事件で被告人を懲役刑に処するという判決が下った場合、被告人は強制的に身柄を拘束され、刑務所などの刑事施設に収監されます。
民事事件では、被告が判決で命じられた金額を支払わない場合、原告は強制執行手続きによって被告の財産を差し押さえることができます。

(2)加害者の対応により結果が変わることがある
加害者が真摯に反省して被害者に謝罪していれば、刑事事件ではプラスの情状となり、刑罰が軽くなることがあります。民事事件でも、例えば交通事故による損害賠償請求事件などでは慰謝料が減額されることがあります。
逆に、加害者が反省も謝罪も一切せず、虚偽の弁解をしたような場合は、刑事事件では刑罰が重くなり、民事事件では慰謝料が増額されることにもなりかねません。

3.刑事でも民事でも訴えられるケース

交通事故(過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪)をはじめとして、被害者がいる犯罪を犯した場合は、刑事責任が生じるとともに、民事でも損害賠償義務が生じます。そのため、刑事裁判で刑罰を科せられた後、さらに民事裁判でも訴えられることがあります。

ただし、一定の種類の犯罪については、刑事裁判の判決に引き続いて同じ裁判官が損害賠償を命じる「損害賠償命令制度」が利用されることもあります。

このように、刑事責任と民事責任の両方が問題となるケースでは、刑事事件の手続き中に被害者と示談をすることが有効です。被害者の許しが得られると、刑事裁判で刑罰が軽くなる可能性が高まります。早期に示談が成立すれば、不起訴処分も期待できます。民事事件として改めて訴えられるここともありません。
言い換えると、民事事件を先に解決しておくことで、刑事事件でも有利な結果が得られやすくなるということです。

ただし、被害者がスムーズに示談に応じてくれるとは限りません。被疑者が逮捕・勾留されていれば、自分で示談交渉をするのも困難です。そんなときは、弁護士に依頼すれば示談交渉を代行してもらえます。

罪を犯してしまった方は、早めに弁護士に相談し、刑事事件・民事事件の両面で解決を図るのがおすすめです。

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