コラム一覧

刑事裁判の量刑について~軽くなる(重くなる)要素とは?~

コラム一覧

刑事裁判の有罪判決では被告人に対して刑罰が言い渡されますが、同じ罪名でも量刑はケースごとに異なります。
量刑とは何か、どのようにして刑罰が決められるのかについて解説します。

1.量刑とは

量刑とは、裁判所が被告人に対して、科すべき刑罰を決める作業のことです。法律に定められた刑罰の範囲内で、重さや種類が決められます。

法律には罪名ごとに刑罰の上限または下限が定められていますが、ほとんどの罪名で刑罰の重さには大きな幅があります。その幅の中で、個別の事案ごとに様々な要素が考慮され、適正な刑罰が決められるのです。

2.量刑の決め方

量刑を決める際には、まず裁判で認定した犯罪事実に適用される条文を決めます。これにより、刑罰の上限と下限が決まります。

次に、刑罰の種類を決めます。条文によっては懲役、禁錮、罰金など複数の種類の刑罰が定められているものも多く、その場合には、どの刑罰を科すべきかを決めるのです。

さらに、刑罰を加重または減免すべき事情がある場合には、その処理を行います。刑罰の加重事由としては、再犯や併合罪などがあります。減免事由としては、自首、正当防衛、心神喪失、心神耗弱、酌量減軽などがあります。

以上のプロセスで絞られた刑罰の範囲内で、以下のような要素が考慮され、実際に被告人に科すべき刑罰が決められます。

3.量刑を左右する要素

量刑を左右する要素としては、まず犯行に関する要素が考慮され、その後に犯行以外の要素も考慮されます。
<犯行に関する要素>
犯行に関する要素としては、次のようなものが重視されます。

(1)犯行の手段・方法や態様
犯行の手段・方法や態様の悪質性が高いほど、量刑が重くなる傾向にあります。
例えば、同じ傷害罪でも、素手による場合よりも、ナイフや木刀などの凶器を使った場合の方が悪質性は高いといえます。

(2)結果の大きさ
犯行による結果が大きいほど、量刑が重くなる傾向にあります。
同じ横領罪でも、1万円を着服したケースよりも、100万円を着服したケースの方が刑罰は重くなりがちです。

(3)犯行の動機
犯行の動機が私利私欲を満たすためなど身勝手なものである場合は、量刑が重くなる傾向にあります。
逆に、被害者から虐待されていたり、挑発されたりした場合のように、被害者にも落ち度がある場合には量刑が軽くなりやすいです。

(4)計画性の有無
犯行に計画性がある場合は、偶発的な犯行の場合よりも量刑が重くなる傾向にあります。
同じ窃盗罪でも、置き引きよりは、下見をした上での空き巣の方が計画性が高いといえます。

<犯行以外の要素>
犯行以外でも、以下の要素は量刑で重視されることが多いです。

(1)被害弁償の有無
被害者がいる事件では、示談金の支払いなどで金銭的に被害が回復されている場合は、量刑が軽くなる可能性が高いです。

(2)反省の有無、程度
被告人が罪を認めて深く反省し、再犯を防止する対策を具体的に決めているような場合は、量刑が軽くなり安いです。

逆に、虚偽の弁解をするなどして責任逃れを図ろうとした場合は、量刑が重くなることが多いです。

(3)被告人の性格や職業
被告人が定職に就き、真面目に勤務していたような場合は、犯罪傾向が進んでいないことから量刑が軽くなる傾向にあります。

逆に、反社会的な性格や粗暴な性格が認められると、再犯の恐れが強いと判断され、量刑が重くなることがあります。

(4)社会復帰後の環境
社会復帰後の仕事が決まっていて、上司や家族などによる指導・監督が見込まれる場合には、再犯の恐れが強い、更生の可能性が低いなどの理由で量刑が軽くなる傾向にあります。

逆に、仕事に就ける目処が立っていない、身寄りがない、悪い仲間との関係が続いている、などのケースでは、再犯の恐れが強いとして量刑が重くなることがあります。

(5)被害者の処罰感情
被害者が被告人の処罰を強く望んでいる場合には、量刑が重くなる傾向にあります。

逆に、被害者が「処罰は望まない」「寛大な処分を望む」などの意思を示している場合は、量刑が軽くなることが多いです。

(6)社会一般に与えた影響
凶悪で残忍な犯行など悪質性が高い事件で、社会一般に与えた影響が大きい場合は、量刑が重くなることがあります。

逆に、犯行が発覚したことによって被告人が解雇された、退職金ももらえなかった、などの社会的制裁を既に受けている場合には、量刑が軽くなることもあります。

(7)余罪の有無、件数

起訴された犯罪事実の他にも犯行が認められる場合には、被告人の犯罪傾向が進んでいるなどの理由で量刑上、不利になる傾向があります。

(8)前科、前歴の有無や内容、件数
前科や前歴があると、再犯の恐れが強い、更生の可能性が低いなどの理由で量刑が重くなる傾向にあります。特に、起訴された犯罪事実と同種の前科、前歴がある場合には、この傾向が強いです。

逆に、初犯の場合は更生が期待できるとして、量刑は軽くなることが多いです。

<量刑の重さは変えられる?>
量刑を左右する要素の中には、事後に変更できないものもあります。しかし、真摯に反省する、被害者と示談をする、社会復帰後の環境を整える、などによって量刑を軽くできる可能性は十分にあります。

下関・宇部・周南・岩国の弁護士法人ONEにご依頼いただければ、有罪判決を免れない事件でも、できる限り量刑が軽くなるようにサポートいたします。
ご自身やご家族が罪に問われてお困り場合は、お早めに当事務所へご相談ください。

法律コラム一覧はこちら

法律問題の解決事例一覧はこちら